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研究

研究成果

学会発表

IFSCC世界大会での発表内容

IFSCC第26回ブエノスアイレス大会において5件の学術論文を発表

IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)第26回ブエノスアイレス大会(2010年9月20日~23日)で、以下の5件の学術論文を発表しました。

今回は口頭発表3件、ポスター発表2件の合計5件を発表しました。口頭発表は厳しい審査を通過したものだけが発表することができます。発表論文は以下のとおりです。

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1. 「新しい断面分析法と理想的な化粧膜設計への応用」(口頭部門)A Novel Cross-Section Analysis Method and Its Application in Designing Ideal Cosmetic Films

従来のミクロトームを用いて、正確な化粧膜の断面を作製することは大変困難でした。
ミクロトームは物理的な力によって断面を加工するため、断面作製時、化粧膜の構造崩壊が起こってしまうことがその要因です。
そこで、この構造崩壊を避けるため、化粧膜の断面作製法にクロスセクションポリッシャ法(CP法)を新たに導入しました。
結果、CP法は化粧膜の構造崩壊を引き起こすこともなく、化粧膜の断面作製法として、大変効果的かつ有用な方法であることが明らかになりました。
次いで、サンスクリーン開発にこの技術を応用しました。
脂肪酸処理TiO2 とシリカ処理TiO2 を既存の汎用無機系UVフィルターとして選択し、CP法を用いて断面を作製後、SEM/EDSにより断面を解析しました。
その結果、既存のUV フィルターは、化粧膜中においてTiO2 が均一に分散していないことが、CP 法による正確な膜断面解析を実施することで判明しました。
紫外線防御効果を最大化させるには、サンスクリーン膜中におけるUVフィルターの均一な分散が必須となるため、分散状態を改善する必要があります。
そこで我々は、膜中でより均一な分散状態をとる新規無機系UVフィルター、ポリアクリル酸Na処理TiO2(P-TiO2)を開発いたしました。
P-TiO2の膜断面をCP法で作製後、SEM/EDS で解析した結果、化粧膜の上層から下層に至る全層においてTiO2 の均一な分散が確認されました。
さらに、ポリアクリル酸の主鎖部分の炭素が、化粧膜の表層により多く分布していることも分かりました。
これは、P-TiO2は水分散体であるにも関わらず、乾燥後の化粧膜は疎水性を持つということを示しています。
最後に、P-TiO2 を含んだ製剤を作製し、in vivo のSPF を測定しました。
結果、高い紫外線防御効果(紫外線防御効果の最大化)と、水中油剤型にも関わらず、高い耐水性を示すことが明らかとなりました。

 

メークアップ開発部
本郷 嘉人 研究員

2. 「表皮バリア機能における温度感受性イオンチャネルTRPV4の重要性」 (口頭部門)Thermo-Sensitive Barrier: Importance of Transient Receptor Potential Vanilloid 4 (TRPV4) in Epidermal Barrier Function

私たちの体中心部の温度は一定に保たれていますが、皮膚の温度は外気温の影響で大きく変化しています。
しかし、このような温度変化が皮膚生理機能に直接影響を及ぼすメカニズムについてはほとんど知られていません。
本研究では、表皮細胞に存在する温度感受性イオンチャネルTRPV4を介して、温度が直接皮膚生理機能に作用するメカニズムを明らかにしました。
TRPV4は「温かい」温度を感知して細胞内へのカルシウム流入を促進し、Rhoを活性化することで細胞間接着構造体(アドヘレンスジャンクション、タイトジャンクション)の形成に関わり、皮膚バリア機能を制御していることが示されました。
この発見は、皮膚科学研究において「温度」という新たな分野を切り開くとともに、皮膚の温度や温度感受性イオンチャネルの作用を考慮した新たなスキンケア製剤の開発を導くものと確信しています。

 

皮膚薬剤研究部
木田 尚子 研究員

3. 「肌内部からの輝きを再現するメーク料の開発」(口頭部門)Development of Make-up Products which Reproduce the Radiance from the Inside of Skin

真珠や貝は、層構造に由来する内部からの美しい輝きを放ちます。
この原理を参考に、肌内部からの輝きをメーク化粧料で瞬時に再現しようと考えました。
そのために、皮膚(角層)の層構造に着目し、肌内部からの輝きと角層の層構造の関係性について検討しました。
まず、肌内部からの輝きを評価するため、輝きの官能評価と散乱光比率(反射総光量に占める肌内部で散乱する光量の割合)測定、及び角層の状態観察を実施しました。
その結果、角層の規則性と肌内部からの輝きの官能評価、散乱光比率に有意な相関関係があることが明らかとなりました。
次いで、既存のメーク粉体の散乱光比率を測定したところ、不規則な角層状態と同様程度以下の49.2%-82.2%に留まっていることが判明しました。
そこで我々は肌内部からの輝きを再現する新しい粉体の開発に取り組みました。設計思想として、規則的な層構造に着目しました。
新しく作製した粉体は屈折率が1.53 のナイロン層と屈折率が1.58 のポリエステル層が交互に積み重なっています。
この新しい粉体は90.16%という、規則的な角層を上回る高い散乱光比率を示しました。
最後に、この新しく開発した粉体を配合したメーク化粧料を作製し、その効果をin vivoで確認しました。
散乱光比率は、何もつけていない素肌の状態で84.9%であった被験者に対して、新しいメーク化粧料を塗布することで91%にまで上昇し、その仕上がりも高い輝きを持つことが明らかとなりました。
本研究は、肌内部からの輝きを再現する新しい粉体を配合したメーク化粧料の開発とともに、角層構造を改善することで、本来我々が持つ肌内部からの輝きを改善できることを示しています。

 

メークアップ開発部
飯田 昌枝 研究員

4. 「角層下層の平板状ラメラ構造再構築による乾燥肌の改善」(ポスター部門)Improving for Dry Skin through Lamellar Structure Reconstruction in the Lower Stratum Corneum

乾燥肌の原因は多様であるため、これまで乾燥肌に対して多くの対処法が提案されてきました。
最近の皮膚組織学的研究の知見から、乾燥肌の角層下層の細胞間脂質層は、健常肌に比べて乱れていることが示唆されています。
そこで我々は、角層下層の細胞間脂質ラメラ構造を再構築させることで、従来の角層表面の閉塞に着目した対処法以上の効果が発揮できると考えました。
この仮説を証明するため、両親媒性物質により構築されるベシクルを活用しました。
ベシクルは、角層浸透性が高い一方、環境に応じて細胞間脂質ラメラ構造に類似した平板状ラメラに相転移することが可能です。
この特性を利用し、角層下層領域の水分環境(40wt%)で平板状ラメラに相転移可能なベシクルの調製を目指しました。
しかし、水分量40wt%という水の多い環境では、従来の両親媒性物質ではベシクルから平板状ラメラへの相転移が起こりません。
そこで本研究では、微生物由来の両親媒性物質を基本にベシクルを設計することで、ベシクルの物理化学的特性を調節し、目的とする製剤を得ました。  
作製したベシクルを、乾燥肌モデルに塗布し、透過型電子顕微鏡により観察した結果、角層下層領域に平板状ラメラ構造の再構築が確認され、我々の目的とするベシクルの相転移が確認できました。  
最後に、このベシクルを含んだローションの有効性を評価するため、乾燥肌被験者に2週間連続塗布しました。
その結果、本ローションによる乾燥肌の改善は、既存の乾燥肌の対処法と比較して、より短期間で達成されることが確認できました。
このことは、角層下層におけるラメラ構造へアプローチすることが、乾燥肌の改善により効果的であることを示すものです。

 

スキンケア開発部
竹山 雄一郎 研究員

5. 「ヒト角層中Advanced Glycation End Products (AGEs)の皮膚表面形態及び皮膚上層部物性に及ぼす影響」(ポスター部門)A New Look at Skin Aging: Advanced Glycation End Products(AGEs) in the Stratum Corneum

皮膚の表面形態・物性は年齢とともに悪化します。
キメは皮膚の老けた印象に影響するにも関わらず、その形態に関与する要因はよく分かっていません。
キメの変化に関係する可能性をもつ因子として、角層の力学特性が挙げられます。
AGEsはタンパクの弾力性と柔軟性を減少させることが知られていますが、皮膚のAGEsに関する研究のほとんどは真皮に着目したものであり、角層に着目したものではありませんでした。
本研究の目的は、角層中のAGEsが皮膚表面形態と物性にどのような影響を与えるか調べることです。
我々は、頬部の皮膚表層の起伏度(キメの凹凸の指標)、表面形態の等方性(キメの流れの指標)、皮膚表層の柔軟性の測定を実施するとともに、角層中のAGEsを免疫染色法により検出しました。
その結果、皮膚表層の柔軟性が低いと皮膚表層の起伏度が低く平坦であり、また、等方性が低くキメの流れが生じることが分かりました。
続いて我々は、角層中にAGEsの存在を発見し、その角層AGEsの量が皮膚表層の柔軟性の減少と正の相関を示すこと、また、角層AGEs量が皮膚表層の起伏度、等方性とは負の相関を示すことを明らかにしました。
さらに、UVBが角層AGEsの形成を急速に促進することを明らかにしました。  
これらのデータを併せると、角層AGEsは皮膚の柔軟性を減少させ、またキメの状態に影響を及ぼしており、さらにUVBが角層AGEs形成に関連していると考えられます。
このように、角層中のAGEsは皮膚の老けた印象の原因であると考えられ、角層AGEsをケアすることは、皮膚老化への対応として重要であるといえます。

 

皮膚薬剤研究部
五味 貴優 研究員

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