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研究

研究成果

学会発表

IFSCC世界大会での発表内容

IFSCC第29回オーランド大会において6件の学術論文を発表

IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)第29回オーランド(アメリカ)大会(2016年10月30日~11月2日)で、以下の6件の学術論文を発表しました。
今回は口頭発表3件、ポスター発表3件の合計6件を発表しました。発表論文は以下のとおりです。

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1.「皮下腱細胞~タルミ改善の新たなカギを発見~」(口頭部門)Subcutaneous tendon cells, an newly discovered player for improving facial sagging

顔のタルミは、特に中年以降の女性にとって大きな肌悩みのひとつです。我々はこれまでに、皮下組織の中に存在する網目状の線維構造(retinacula cutis=RC)の減少がタルミにつながることを報告しました。
しかしながら、RCを構成する成分やその線維形成に関わる細胞は特定されておらず、RCが減少するメカニズムは未だ解明されていません。
そこで本研究では、タルミの発生機序を明らかにするため、RC構成成分とその産生細胞を同定するとともに、RC構成成分の加齢変化について検討しました。
その結果、ヒト頬部位の組織学的解析によって、コラーゲンやプロテオグリカンがRCの主要成分であることが明らかとなりました。また、RCの線維構造は腱と非常によく似ており、RCの中には腱細胞が存在していて、RCの主要成分を産生していることが示唆されました。さらに、腱細胞が産生するRC主要成分の量は、加齢と共に減少していました。
これらの結果から、腱細胞によるRC構成成分の産生量低下により、RCが加齢で減少すると考えられました。
本研究により、RCに存在する腱細胞の加齢変化がタルミを引き起こす原因のひとつと考えられ、腱細胞が顔のタルミを防ぐ有用なターゲットになり得ることが示されました。

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肌科学研究部
坂田 綾 研究員

2.「高分子ヒアルロン酸の皮膚内送達を可能にする化粧品製剤技術の開発」(口頭部門)New formulation technique to promote high-molecular-weight hyaluronic acid penetrating into the skin without injection

皮膚の弾力性や潤いを保つには皮膚内に存在する高分子ヒアルロン酸が重要な役割を果たしています。しかし、その量は年齢を重ねるにつれ減少します。これまでは、高分子ヒアルロン酸を配合する化粧品を塗布し肌内部へ補おうとしても、分子サイズが大きいため皮膚に浸透させることは困難でした。一方、近年、注射などの侵襲的な手法により肌内部へ送り届ける美容医療が普及してきていますが、痛みや炎症など有害反応を生じるリスクは回避できません。そこで、我々は安心・安全な非侵襲的手法として、高分子ヒアルロン酸を微粒子化し、それを化粧品へ配合することで皮膚内へ効率的に届けることができないか、研究を進めました。本研究ではヒアルロン酸が溶液中で陰イオン性を示すことに着目し、ポリリジン等の対となる陽イオン性高分子を併用することで相互作用し、微粒子化することを見出しました。また、素材の適切な選定により、皮膚内模倣環境下で元の状態へ復元する微粒子を作製できることも見出しました。実際にこの微粒子を含むモデル製剤をヒト皮膚に適用したところ、良好な浸透性や状態復元性を確認することができました。本技術はコラーゲンなど他の生体高分子への応用も考えられるため、侵襲的な高分子有用成分の導入法に代わる画期的な手法となり得ることが期待されます。

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開発研究部
林 亮太 研究員

3.「ナチュラル・オーガニック化粧料の感触と機能を向上させる新規乳化理論の構築」(口頭部門)A technique for formulating natural/organic cosmetic emulsions for improving their sensory textures and functions

ナチュラル・オーガニック化粧品は、消費者の環境への関心の高まりを背景に、近年世界的に著しく市場が成長していますが、非ナチュラル・オーガニック製品に比べアイテム数も少ないうえに感触の幅が狭く、消費者に十分な満足を提供できていない現状です。この原因の一つに、原材料がナチュラル・オーガニックに制約されると、一般的な乳化技術では、限られた剤型及び特定の範囲の感触しか作り出せないことが考えられます。そこで、ナチュラル・オーガニックな界面活性剤を使用しても微細で均一な粒子径の水中油(oil-in-water)型エマルションを誰もが調製できる、まったく新しい乳化技術の開発に挑戦し、成功しました。
この技術では「粘度」という簡単に測定できる値を指標に、ラメラ液晶とヘキサゴナル液晶をそれぞれ形成する2種類の界面活性剤を特定の比率で混合することにより、あらゆる種類の油剤の乳化が可能になります。本技術の開発により、ナチュラル・オーガニック製品の多様なアイテム展開が可能になり、感触設計の幅が広がるだけでなく、肌に対する機能の付与も可能となりました。本成果は、ナチュラル・オーガニック化粧品市場の拡大に貢献することはもちろん、それ以外の世の中の乳化製品すべてに応用可能であり、新たな価値の創出も期待できると考えられます。

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開発研究部
仁王 厚志 研究員

4.「LncRNAは細胞の運命を変えることで細胞を再生する」(ポスター部門)Cell-fate-alteration-induced rejuvenation of senescent cells by manipulating long-non-coding RNA

細胞は老化すると自身の活性が低下するだけでなく、細胞周囲のコラーゲンやエラスチンといった構造の分解も促進し、その結果、皮膚老化のような組織/器官レベルの老化が起こることが知られています。老化した細胞を取り除くことで組織/個体の若返りが図れることも知られてきており、細胞そのものの老化を改善することは、皮膚の老化に対する有効な対処法になると考えられます。本研究では、真皮線維芽細胞の細胞老化が、翻訳されないRNAの一種である、lncRNAs (long non-coding RNAs)により制御されていることを見出しました。
lncRNAのひとつであるLINC00942の発現量を減少させると、細胞の運命を決定する細胞記憶(ヒストンタンパクの化学修飾)の変化が起こり、細胞老化が導かれます。興味深いことに、LINC00942の発現を一時的に抑制すると、その後細胞は老化の方向に進んでしまうことから、細胞老化におけるLINC00942の関与は不可逆的なイベントであると考えられます。LINC00942は老化過程における細胞の運命を左右することから、LINC00942をケアすることは若返りのための有効な手段を導くものと思われます。

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肌科学研究部
楊 一幸 研究員

5.「ベース処方による皮膚生理機能の改善~Basket-weave角層の形成が鍵~」(ポスター部門)Basket-weave stratum corneum as a key awaking the skin physiological functions by simple emulsion-bases

スキンケア製剤は、有効成分を含んでいなくても、皮膚の生理的機能に影響を与えることがあります。しかし、その根底にあるメカニズムはよくわかっていませんでした。本研究では、より高い効果をもつスキンケア製剤をつくるため、そのメカニズムを解明することに挑戦しました。その結果、スキンケア製剤が皮膚生理機能に影響を与えるためには、角層の構造をバスケットウィーブ状に成熟させる能力が鍵となっていることを見出しました。バスケットウィーブ状角層は、皮膚のバリア機能に重要なだけでなく、角層に入った光の拡散を促すことでソフトフォーカス効果を生み、また構造内に細胞間脂質を満たすことで角層の柔軟性を生み出すためにも重要であることが判明しました。この構造が形成されるメカニズムには、スキンケア製剤が、角層内の酵素が働きやすい環境を整えることにより、角層間の間隙を形成し、その間隙にラメラ脂質が満たされる、という角層の成熟過程の促進が関わっていると考えられました。
この結果より、バスケットウィーブ状角層を指標にすることで、より高い効果実感を与えるスキンケア製剤をつくることが可能になると考えられます。また、今後さらに研究を深め、バスケットウィーブ状角層以外にも、さらに効果実感の高いスキンケア製剤を開発するために鍵を見つけ出していきます。

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肌科学研究部
後藤 悠 研究員

6.「海水を味方につけて、機能を上げる日焼け止め”Sea-friendly sunscreen“の開発」(ポスター部門)Development of new “sea-friendly sunscreens” ofo which functions were enhanced with seawater

強い紫外線が降り注ぐ海やビーチでは、サンスクリーン製剤を使用し、肌を守ることが非常に重要です。
しかし、これらの環境では水に触れることで起こる再乳化だけでなく、海水に含まれるイオンによって、サンスクリーン塗布膜は肌から落ちやすくなり、期待する紫外線防御効果が得られないことがあります。そのため、従来の耐水性機能だけではなく、耐イオン性を兼ね備えた『耐海水性機能を有するサンスクリーン』の開発が強く求められています。耐海水性を実現するために、我々は粉体が海水中のイオンにより凝集する特性に着目し、粉体を用いたピッカリングエマルジョン型サンスクリーン製剤を開発しました。
本製剤は界面活性剤を使用しない為、界面活性剤が海水や水とまじりあう『再乳化』という現象を抑制でき、耐水性を高めることが可能となります。さらに、海水中のイオンで凝集した粉体は紫外線を散乱するようになるため、海水と触れたときに紫外線カット効率を向上させることが可能です。
本技術を活用することで、海というサンスクリーンの塗布膜にとって過酷な環境下で紫外線から肌を守るのみでなく、紫外線防御効果が一段と高まる画期的な機能を有するサンスクリーン製剤の創出が期待できます。

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開発研究部
中谷明弘 研究員

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